衣服とのバランスを整える

バブルの頃は派手な衣服と化粧と髪形に合わせて、色々なイヤリングも試して遊んでいました。友人たちはほぼ全員ピアス派でしたが、私は体に穴を開けることに抵抗があったので、専らイヤリングにこだわっていました。
しかし、イヤリングはいつの間にか耳から外れている場合があることが欠点です。私も頻繁にあり、あっという間に1つだけのイヤリングが大量発生してしまいました。でも、当時は余程のことでなければどんなお洒落も世に通ったバブル時代です。右耳と左耳とで違うデザインのイヤリングをつけて、ますます楽しんでいました。
そんなある日、サークルの男先輩から「お前、無理していねぇか?」と突然言われました。
「お前、他の奴らよりちゃらちゃらしてるけど、本当のお前じゃない気がするんだよな」
そう続けて、その人は洗濯ばさみを私の両耳に挟んで悪戯っぽく微笑みました。
「痛い、いきなり何するの」ともちろん私は怒りましたが、反射的に「痛い」と言ったものの、本当は意外にも全然痛みは感じられませんでした。
そして、そのとき少し考えて気が付いたのです。自分としては、色々なファッションを楽しんで流行の先端を走っているという満足感に満ちていると思っていたのですが、本当はそうではなく、本来自分がやるべきことから目をそらし続けているのではないかと。
次の日、私はお洒落にこだわることから突然卒業しました。イヤリングをつけることもぴたりとやめました。急に見た目が質素になったので、周囲の人たちはとても驚きました。大失恋したに違いないという噂も一気に大きく広がりましたが、私は全然気にしていませんでした。
あれから20年が経ちました。現在、教師になるという夢をかなえた私がいます。そして、そんな私の隣には、大いびきをかいて寝ている夫がいます。あぁ、鼻をつまもうかなあ、あのとき私の耳を挟んだ洗濯ばさみで。
私の一番大切なイヤリングです。

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